地方銀行を辞めた話

今回は僕が地方銀行を辞めた話を書きたいと思います。僕は新卒で地元の地方銀行に入りました。結果として3年間働いて辞めることになるのですが、今日は3年間働いてみて感じたことや、当時の思いなどについて書いていきたいと思います。今まさに銀行員としてのキャリアに疑問を感じている方や、これから銀行員になるかたに少しでもお役にたてる記事になると嬉しいです。

銀行に入ったきっかけ

僕が銀行に入ったのは立派な志望動機があったからではなく、就活に失敗したからです。当時目指していた業界は狭き門だったこともありあえなく撃沈。詳しくは書きませんが、結果として内定を頂いていた地元の銀行に就職することを選びます。

銀行を選んだ理由は、ビジネスについて広く学べるのでまた転職の機会があるのではないかと考えたこと。世の中の基本であるお金について学べるといった理由からでした。そんなこんなで入行することになったのですが、僕が初めて配属になったのは地元ではなく県外にある法人特化店舗でした。

焦りしかなかった銀行員1年目

銀行に入って配属になったのが融資係です。僕がいた銀行では入行3年目までは基本的に内勤として「融資係」か「預金係」として銀行の基礎知識を学びます。大多数が「預金係」として銀行の窓口業務や出納業、為替業務等を行いますが、僕は法人融資や住宅ローン等の個人融資を担当する部署に配属なりました。

当時の仕事は本当に雑務ばかりでした。コピー取りからファイルの整理、先輩行員が審査を行うための資料の更新や、入出金等のオペレーション業務などなど。修業期間だとは思っていましたが、あまりにも雑務ばかりで日々もどかしさを感じていたのを覚えています。

大学の同期には1年目ながらそれなりに責任のある仕事を任せられている友人もいれば、営業で現場に出ている友人もいました。そんな中でこんなことをしていていいのかと焦りばかりが募る日々でした。

また、毎日読む新聞にも銀行にとっては後ろ向きな記事ばかり。地方銀行の何割が赤字といった記事とか、マイナス金利による経営への悪影響、フィンテック企業の台頭等、読んでいて気持ちが落ちる記事ばかりでした。果たして銀行に入ったことが良かったのか、そんな悶々とした時期を過ごしていました。

転機となった先輩行員の休職

1年目を終えようとしていたころ、ある事件が起きます。それが営業担当をしていた先輩行員の休職です。ただでさえ人手不足だった営業係の中で、急に休職者が発生してしまったため支店は大騒ぎです。すぐに補充が来るわけでもなく、だれか人員を補充しなくてはならない中で白羽の矢が立ったのが僕でした。

先ほども書いた通り、僕がいた銀行では新入行員は原則3年間内勤として銀行業務を学ぶことが通常ですが、僕は2年目にして営業担当をすることになります。支店長からこの話を受けたときに正直不安な気持ちの方が大きかったのですが、これが転機となると思いイエスと答えました。

しかし、そこからは地獄のような日々が始まります。これは地方銀行や信用金庫にありがちなことですが、営業係はお客様のところに訪問し、営業とは関係ない事務手続きをすることが多いです。具体的には集金や給与振込の手続きなどが多かったでしょうか。

メガバンクに規模で劣る地方銀行はこういったきめ細やかなサポートをすることで、顧客との関係性を強め取引につなげるというのを一種の強みとしていました。しかし融資係のごく一部の仕事しか経験したことのなかった僕は銀行業務について断片的なことしか理解できておらず、こういった事務手続きでミスを連発。お客様からも支店からも叱られてばかりの日々を過ごすことになります。

営業どころかミスの補正など後ろ向きな仕事に追われ、本来の営業活動にほとんど時間を割くことができないままただ日々が過ぎていきました。

内勤時代と比べ毎日がつらく、正直銀行に行くのが億劫な日々が続きました。しかし営業係のメンバーのサポートもありなんとかこういった事務手続きにも慣れ本来あるべき営業の業務にも徐々に時間を使えるようになっていきました。

営業を通じて感じた金融の面白さ

つらい日々だったのも確かですが、少しずつ心境の変化も現れます。それが「金融」という仕事の面白さに気づき始めたことです。正直、僕はこれまで金融の仕事にほとんど興味がありませんでした。

他人のお金を預かることはとんでもないプレッシャーですし、なにより細かいところまで完璧さの求められる仕事です。昔から注意力が足らず、細かいことが苦手だった自分にとっては向いてないとばかり思っていました。

しかし、営業を通じてお客様の役に立つ経験を通じて金融の仕事も悪くはないのかなと思い始めました。新規ビジネスを計画する接骨院の先生に融資をして喜んでもらったとき、ライフプランニングに関するアドバイスをして主婦の方に喜んでもらったとき、お金を通じて人を喜ばせることってやりがいがあるなと感じている自分がいました。

僕が特に魅力を感じていた業務は「事業承継」の分野です。事業承継については聞いたことのない方もいらっしゃると思いますが、企業の代替わりをお手伝いする仕事です。現在、団塊の世代が75歳を超えたということもあり経営者の高齢化が社会問題となっています。中小企業庁のデータでは2025年には約381万社ある中小企業のうち約245万社の企業の経営者が70歳を超えます。

そのうち127万社が後継者不在という状態。このままでは廃業する企業が増え、技術や雇用が失われる可能性があることから、国としても危機感を感じ各種施策を打っている問題です。自身の顧客でもやはり後継者不在に悩みを抱える経営者もおり、自分もこういった人たちのために力になれるような仕事をしたいと思うようになりました。

銀行でやりたい仕事をする難しさ

営業としてやりがいを感じていたこともあり、銀行員としてのキャリアも悪くないなという思いもありましたが、同時に銀行で自身のやりたい仕事をする難しさも感じ始めていました。

理由は大きく二つあります。一つ目は転勤です。事業承継の仕事はすぐに終わるようなものではありません。最低でも数ヶ月かかり、一年以上かけて取り組むのが一般的です。銀行員は転勤が多く、せっかく事業承継の相談を受けてもどこまで担当させて頂けるかわからず大きな不安となっていました。

二つ目が、銀行が定める顧客無視の目標設定です。銀行員である以上ノルマがあるのは当然として、僕のいた銀行では目標設定が細かすぎました。融資金額●円、投資信託販売●円、住宅ローン金額●円、クレジットカード作成件数●件等…とにかく各項目での達成が求められるのです。

特に上記のクレジットカードなんかは手数料がかかるのに大した特典もないカードを売ってこいと言うのですから時代錯誤も甚だしいと感じていました。各種目標について進捗を確認されるので、なかなか一人のお客様に時間を割くことができませんでした。

転職の決意と顧客のための営業

あっという間に営業になって1年がたち、入行して3年目になりました。前述した通り銀行に残る選択肢も考えましたが、やはり銀行では自分のやりたいことをすることは難しいと感じ、転職することを決意します。

転職を決めてからは仕事が本当に楽しかったのを覚えています。これまではどうしてもノルマに追われ顧客本位の仕事ができていない部分がありましたが、辞めると決めてからは吹っ切れて「どうせなら顧客の役に立つ仕事がしたい」と思うようになりました。

営業としては失格かもしれませんが、自身の成績は度外視しして顧客のために仕事をする日々。若輩者の僕が言うのも恐縮ですが「仕事の楽しさ」を知れたのもこのときでした。

不思議なもので、数字ばかり追いかけているとうまくいかなかったことが、顧客のために仕事をしているとうまくいくようになりました。大型案件の獲得や新規案件の受注など、数字を追いかけていたときとは明らかに異なる感触を感じました。

転職活動そして転職へ

転職活動については別記事で書こうと思っているのでここでは少しだけ書きたいと思います。僕が転職活動をしたのは3ヵ月ほどです。

正直、転職活動をするのはつらかったです。志望企業の人事の方も遅くまで対応はしてくれますが、それでも面接の多くは6時半や7時開始でした開始。今と違いWEB面接等はなかったので、仕事を早めに切り上げ面接に向かう日々。定時に切り上げ退社する僕は当時相当怪しかったと思います...

僕はエージェントを使いました。何人かのエージェントに会いましたが、僕は運よくしっかりと話を聞いてくれ、伝えにくいこともはっきり言ってくれるエージェントさんに出会うことができました。

当時は休日も企業研究や志望動機の練り上げ等にかなりの時間をとられ当時はほぼほぼプライべートの時間がとれなかったです。ある程度会社は絞れていましたが、リスクヘッジや面接の練習のために脂肪度が高くない会社も受けるようにしていたため、準備は結構大変でした。

それでも環境を変えたいという思いは強くなんとか頑張ることができました。3か月間の転職活動期間を経て、僕は結果として第一志望だった会社に転職することができました。

終わりに

ここまでだらだらと書いてきましたが、最後に少しだけ。

僕が銀行を辞めてから4年が経ちました。今は転職した会社で充実した日々を過ごしています。友人や知人から「転職してよかったか?」と聞かれると、僕は間違いなく「良かった」と答えています。

すべてが良かったというつもりはありません。転職して残業時間も増えましたし、業務で求められるレベルも格段に上がりました。人間関係も銀行よりはドライで、楽ですがちょっと寂しいなと思うこともあります。

ただ、銀行を飛び出してみて外の世界を見れたことで感じることも多くあります。「銀行の常識は世間の非常識」という言葉がある通り銀行は特殊な世界だったんだなと思います。やはりお金を扱うという仕事柄、銀行は様々な制約が多いです。情報管理の観点から担当者にメールアドレスが付与されていなかったり、出退社時の挨拶回りなど、今では「なんで?」と思うような古い慣習も多くあると思います。

もしキャリアに迷われている方は一度外の世界に飛び出してみる。そんな経験もあってよいのではないかと思います。いいことばかりではないですが転職は自身の価値観が大きく変わる機会です。まずはエージェントに相談してみる、そんな一歩から始めてみてもよいのではないでしょうか。

今日は個人の体験談についてダラダラ書かせていただきました。「銀行員」のキャリアに疑問を感じている人のお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んで頂きありがとうございました。

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